shi−ki
〜薄紅〜
9
襖の奥から現れた人物を見て、あたしは息を飲み込んだ。
――女の子。あたしと、同じくらいの。
白いブラウスと、同じく白いスカートに身を包んだ彼女は、まっすぐに部屋の真ん中に進むと、あたし達と向かい合わせに座った。
「板谷様ですね。お話は伺っております」
落ち着いた、良く通る声。
「私は九条家の当主で、響(ひびき)と申します」
そう言うと、彼女は丁寧に一礼した。あたしは慌てて、頭を下げる。
[当主]?じゃあ、この女の子が例の[霊能力者]ってこと?
何だか信じられなくて、もう一度彼女を見た。
綺麗なストレートの黒髪は、腰の辺りまで垂れてる。ぱっちりとした、二重まぶたの目。意思が強くてキツそうにも見えるそれを、弓形の眉が和らげてる。
――結構美人、かも。
「――九条さん、今日私共が伺ったのは……」
あたしがぼけーっと彼女を見ていると、お父さんがそう切り出した。
「はい。存じております」
九条さんは、人の良さそうな笑顔を浮かべて、頷いた。
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