shi−ki
〜薄紅〜
10
「では……?」
緊張した顔のままで、お父さんが身を乗り出した。
「ご依頼、お受けしたいと思っております。…お嬢様の写真は、お持ち頂けましたか?」
前に持ってくるように言われたらしく、お母さんが封筒をバッグの中から出してきた。
お姉ちゃんの、写真。
九条さんは、封筒からそれを取り出して頷く。
「お預かり致します。――では、早速」
来た。
どうせ手でも合わせて、訳の分からない呪文でも唱えるんだろうと身構える。でも、彼女が取ったのは、全く予想もしない行動だった。
一体どこから取り出したのか、細長い紙を指先で捩っている。
何をしてるんだろう、と見守るあたし達の視線の中、九条さんはこよりで紙人形を作っていた。…頭と、手足を形取った、簡単なもの。
紙人形を完成させると、それを写真の上に置き、さらに彼女の左手を重ねて、呟いた。
「板谷あいり。中途にて手折られた、悲壮なる少女の御霊よ。我の声届くなら、呼び掛けに応え給え」
――それ、だけ……?
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