shi−ki
〜薄紅〜
7
日曜日。晴れ。
頭に来ちゃうくらいに、空は明るい。桜まで咲いちゃってる。
あたし、桜って嫌い。すぐに散っちゃうから。綺麗なままで終わる――お姉ちゃんみたいに――。
「ここか....」
車を止めたお父さんが、運転席で呟いた。あたしは、顔を上げて窓の外を見る。
でっかい家――
あたし達は、車を降りて門へと向かった。
古い、木で出来た家。どっしりと落ち着いた雰囲気があって、門の前にいるだけなのに、妙に緊張する。
何だか居心地の悪いあたしは、辺りをきょろきょろと見まわした。
ふと、その目が表札の上に止まる。
「九条」
くじょう――って読むのかな。
その、高価そうな、分厚い表札を眺めていると、
ぎ、ぎぎ....
と、軋む音を響かせて、門が開いた。
「ようこそいらっしゃいました。――板谷様でございますね。お話は伺っております。..では、どうぞ中へ」
中から現れた小柄なおばあさんに、中に入るよう促される。
あたし達は、何一つ言葉を交わす事なく、木造の大きな門をくぐった。
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