shi−ki
〜薄紅〜
12

 目の前に、お姉ちゃんがいる…。
 殺されたあの日と同じ服、同じ髪形。ただ一つ違うのは、ここにいるお姉ちゃんがもう生きてはいないってこと……。

[みんな……]

 お姉ちゃんが、ゆっくりと口を開いた。
 頭に直接響いてくる声。――2年ぶりの、声…。

「あいり…あいり……!」

 お姉ちゃんの名前を呼ぶと、お母さんは手で顔を覆ってしまった。肩が、小刻みに震えてる。
 あたしは、目の前の光景が信じられなくて……。お姉ちゃん――お姉ちゃんがいるなんて……。

 自分でも分からずに、手を延ばしていた。お姉ちゃんの方へ。
 あと10cmぐらいで触れる、そこまで手が近付いた。その、瞬間に。

(―――ッ!)

 突然頭に浮かんでくる、最期の光景。

 お姉ちゃんが目を閉じて、浅い呼吸を繰り返している場面。吐き気がするくらい濃い、血の匂い。冷たくなっていく身体……。

「…違う……」

 いつの間にか、言葉が口から出ていた。


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