"ADDICTED TO YOU"

布団から出て体を起こした僕は、僕を起こしに来たゆうきを見てビックリした。

「幸平、おはよ。学校行こっか。」

「いやいや…行こうかじゃないでしょ、それ…どうしたの?」

「それ…?」

「頭だよ頭!!」

「ああ…昨日、学校サボッて美容院に行ってきたの。なかなか予約取れない所で、昨日しか空いてないって言われたから…。で、やってもらっちゃった。」

「何で…」

「え?」

「何でストパーなんかあてちゃったんだよ!!」

ゆうきはきょとんとしている。

「何でって…湿気でくるくるになっちゃうから…。もしかしてすごく似合ってない…?」

「似合ってないんじゃないよ…ただ僕は…ゆうきのちょっとくせのあるふわふわの髪が好きだったんだ…。」

「えっと…えーっと…それは褒めてるのか怒ってるのかどっち…?」

「…僕は前の髪形のが好きだった…。」

「そっか…ごめん。」

「昨日、ゆうきの友達が教室で雑誌を見て騒いでたんだ。僕は女の子がどういう雑誌を見るのか気になって少しだけ見せて貰ったんだ。そしたら妙に髪が真っ直ぐな子ばっかで…もしかしたらゆうきもこういうのやりたいのかなって思ったんだ…だけどゆうきに限って…って思ってどうでも良いかって思って…思って…思って…。」

僕は本当にショックで、朝っぱらから取り乱してしまった。

「そっか…幸平は天パの私が好きだったんだ。本当にごめんね。暫くはこの真っ直ぐなまま戻らないんだけど、ずっとほっといたら元に戻るから、それまで待っててね?」

「…今の髪形が似合ってないってわけじゃないんだ…心配なんだよ、僕は。男は大体サラサラの髪が好きなんだ…ゆうきがストパーなんてあてたら、もっと僕以外の男子から好かれちゃうんじゃないかって、恐かったんだ。」

「幸平…。」

「ゆうきは可愛過ぎるんだよ…。考えようよ、周りの視線。」

「…わかった。これからはもうちょっと気をつけるよ。って…うわっ!!幸平、遅刻するよ!!早く顔洗って!!」

髪形が変わったって、ゆうきじゃなくなるわけないんだけど、可愛さが増して、僕以外の男に好かれてちやほやされたら、自分との距離がもっと広がるような気がした。僕は焦っていた。自信が無かった。ゆうき程モテるわけでもないし、もっとゆうきに釣り合う奴はいくらでも居ると正直思ってたからだ。

将来は結婚するんじゃないかなんて何度か言われたけど、僕はそこまでの自信が持てなかったし、ゆうきは渡さないなんて強く思っていたけど、ゆうきが選ぶ道ならば邪魔することができないと感じていたし、中途半端な気持ちだった。

元気でキラキラした笑顔で僕のことを好きだと言ってくれるゆうきをいつか失ってしまうのではないかと考えるとすごく胸が苦しくなった。

「幸平、早く!」

その楽しそうな声をいつまでも聞いていたかった…。


―continue―
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