"ADDICTED TO YOU"
それから僕の記憶の回想は一気に飛ぶんだけど、まぁそれはただ幸せなまま時が経過したわけで…印象が薄いからというわけではない。
あれは高校2年の4月だった。
ゆうきに家に来ないかと誘われて、できるだけ早起きしてゆうきの家に行った。ゆうきの両親も居た。遅れて僕の両親がゆうきの家に来た。一体何事か…と僕は思った。
「ゆうき、何が始まるの…?」
「嫌だなぁ、うちら誕生日近いから今年は合同誕生パーティーやるのよ。あれ?言わなかったっけ?」
「聞いてないし…。」
ヤバイ…てか聞いてたのかもしれないけど、記憶に無い…。春休みで夜遅くまで起きて色々やってたから頭がボケてる…。しまった…ゆうきの誕生日プレゼント用意してない…!!
「幸平?」
「…」
「幸平ってば!!」
「…え?」
「どうしたの?何か顔色悪いよ…?」
「そ…かな…?」
「うん。調子悪いの?」
「いや…。」
「…変な幸平。」
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!プレゼント忘れてたなんて言えないよ!!全く関心なかったみたいじゃないか…てか何で誕生日忘れてたんだろう…。それ程まで僕は何をしていたのだろう…。鳴呼…とにかくこの場所から逃げ出して、ゆうきの誕生日プレゼントを買いに行かなきゃ!!
「…ゆうき。」
「何?」
「僕、ちょっと用事思い出した。すぐ戻るからパーティーやるの待ってて!!」
「え?あ…ちょっと、幸平!?」
僕は急いだ。
できるだけ早く帰らなければゆうきの両親にも迷惑をかけてしまう。
早く…早くしなきゃ。
僕は一旦家に帰って財布を持って、自転車を猛スピードで漕いだ。まだ肌寒い春の日で、汗をかくことはなかったが、急ぎ過ぎて息が切れた。
そしてついたのが雑貨屋。ちょっとアンティークっぽい独特の雰囲気を持つ雑貨が沢山売っている。時々僕は此処に来るんだけど、前からこれはゆうきに似合うだろうと思っていたネックレスとお揃いの飾りがついた指輪があった。少し高いがゆうきの為だと思えばどうってことなかった。そしてそれを包んでもらい、急いでゆうきの家に帰った。僕は息を整えてゆうきの家のリビングへ繋がる扉を開いた。
「あ、幸平お帰り。」
「ただいま。待たせてごめん。」
「さぁ、幸平君、こっち来て座りなさいよ。」
ゆうきの母親が僕をソファーへ導いた。僕は平然を装って微笑んで会話に参加した。ゆうきの母親がケーキを焼いてくれていたらしく、それを運んできた。家の母親はパーティーで食べる料理を作ってきていた。何で家で作っている時点でおかしいと思わなかったのか、もしかして自分はすごく天然なんじゃないかと呆れた。
パーティーは順調に進んだ。二人でケーキに立てた蝋燭も消した。お互いの両親から付き合いを公認されていなければ、合同パーティーなんて絶対できない。なかなかそんな両親はいないだろうと思うと少々珍しいが、とても自分達は恵まれていると思った。
幸せだった。
二人きりで話でもしてきたら?とゆうきの母親が言ったので、僕とゆうきはゆうきの部屋へ移動した。
「幸平にプレゼントがあるの。」
とゆうきが言った。
「僕も。」
そしてお互いにプレゼントを交換した。
ゆうきがくれたのは、15pぐらいの高さの綺麗なオブジェで、ゆうき曰く、そこにシルバーアクセを飾ったりすると合うんだとか。
ゆうきが僕のあげたプレゼントの包みを開けた。
キラキラ輝くアンティーク調のネックレスと指輪を見たゆうきは、すごく嬉しそうに微笑んで、僕にそれらをつけてくれと言った。
僕はゆうきの後ろに回ってネックレスをつけた。
「次は指輪。」
とゆうきが言った。
ゆうきが出した手は左手。僕が迷っていると、
「薬指に。」
と言った。
ゆうきよりも僕の手が震えた。
ネックレスも指輪も、予想以上に似合っていた。
ゆうきは泣いた。そして言った。
「幸平…未来にもまた同じことが二人でできると良いね…。」
それは未来に二人の家庭を持ちたいという意思のある言葉で、それまで続くか自信の無かった僕にとってはプレッシャーになったが、ゆうきの未来には僕が居るんだ、僕一人なんだと思ったら、予想以上にゆうきは僕のことを考えてくれるようになってたんだって、嬉しくなった。自信持って将来を考えなきゃいけないと思った。
「大好き…すごく好き…」
そう僕の愛しい人は言って僕に抱き着いてきた。僕は細い彼女を抱きしめ返して、少し泣いた。
―continue―
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