"ADDICTED TO YOU"
いつだって僕は周りを見張っていなければいけなかった。自分の彼女だから可愛い可愛いって言ってるわけじゃなくて、本当にゆうきは誰よりも可愛かったんだ。毎日毎日、どんどん可愛くなってくゆうきに僕はすごく欲情したし、全てを自分のものにしたかった。肉体関係を持ったところで自分のものになるというわけではないが、他の誰よりも早くゆうきを抱きたかった。愛しくて愛しくて、狂い死にそうな程、僕はゆうきだけを愛してた。それはもう病的で、付き合ってるという関係でなければかなりの変態だった。
ゆうきゆうきゆうき…もうそればかりで、周りから見てもおかしかったはずだ。伊庭にも、もう少し芹沢を自由にしてやれば?と言われたぐらいだったが僕の独占欲は大きくなるばかりだった。
ゆうき以外の女子から愛の告白を受けることも時々あったけど、かなり冷たくあしらっていただろうと思う…。
幸せだった過去を振り返ればキリが無い…。だけど…思い出は次々に浮かぶ。
鳴呼…そうだ、こんなこともあったっけ…。
僕が愛に狂っていた全盛期、ちょっとした事件があった。
―高校1年の6月―
ジトジトした空気に包まれる梅雨の季節、蒸し暑くてうんざりしながらも僕は学校へ行く支度をしていた。珍しくゆうきは寝坊したらしい。先に行っててとメールが来た。
学校へ行くと、女子達が雑誌を見ながら騒いでいた。その中のある女子が僕に声をかけてきた。
「吉岡君!」
「え…何?」
「今日はゆうきと一緒じゃないの?まさか喧嘩?」
「いや…ちょっと寝坊したから先に行っててって言われたんだよ。」
「ふーん。」
「あ、それより皆で何話してたの?」
僕は暇だったからたまにはゆうき以外の女子にも愛想を振り撒いてみることにした。
「このモデルの子可愛いねぇって言ってたの。」
僕は見せられた雑誌をペラペラめくった。
高校生の女の子ってこんなの読むんだ…へぇ。あれ…?おかしいな。これ…
僕には気になることが一つあった。だけどまぁ特に生活するためには関係ないと思って、気にしないようにした。そして雑誌を返し、自分の席に戻った。
ゆうきは予鈴が鳴ったのに来なかった。1時間目が過ぎても来なかった。4時間目が過ぎても来なくて、段々心配になった。そしてとうとうゆうきは1日学校に来なかった。
流石におかしいと思ってゆうきの家に行った。そしたらゆうきはいなくて、というか家族皆がまだ外出しているらしく鍵がかかっていた。ゆうきにメールしてみた。だけど返って来なかった。僕はすごく心配になった。何か事件にでも巻き込まれてやしないか、どこかが悪くて病院にでも行ったのか…色々考えたけど、どれも違う様な気がして落ち着かなかった。
夜になった。
ゆうきの家に明かりが点いた。ゆうきの元気そうな声が聞こえた。
「病院じゃないみたいだな…。」
暫くしてゆうきからメールが来た。
"今日は寝坊したとか嘘ついてごめんね。"
だと…。
嘘つく必要があるなんて、いったい何処に行っていたんだろう…。
僕はいてもたってもいられなくなって、ゆうきの家に行こうと思ったが、もう遅かったし、明日になるのを待った。
バタバタバタ…
ゆうきの足音だ。
ガチャッ
扉の開く音がする。
「幸平…。」
何だかゆうきの声が心なしか静かだ。
僕はまだ眠いが起きなきゃと思って体を起こした。
…
……
………
「ゆうき…?」
―continue―
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