"ADDICTED TO YOU"
ゆうきは5組…僕は…。
「僕は…あ…」
「何?どうしたの?固まって…。ちょっと幸平…?」
「ハハハ…ありえない…」
「え?何がありえないの?もう、幸平ってば!!もう良いよ、自分で見に行く!!」
そう言ってゆうきは人込みを無理矢理掻き分けて掲示板までたどり着いた。
「吉岡幸平…吉岡幸平…、ん?あー!!」
ゆうきのでかい声が人込みの中から響き渡った。
「幸平も5組じゃーん!!」
僕は知り合いだと思われるのが少し恥ずかしくてちょっと元居た場所から逃げた。
「ちょっと幸平!!何逃げようとしてんの!?」
ゆうきが叫びながら僕を追い掛けてくる。
「幸平ってばー!!」
追い付いたゆうきは僕の腕をガバッと掴んで僕にの肩を無理矢理下げて耳元に囁いた。
「ねぇ、幸平知ってた?」
「何を…?」
「この学校ね、3年間クラス変わらないんだよ。」
「…」
何を今更言ってるんだこの子は…。そんなこと知ってるよ。だから此処にしたんじゃないか…。この条件の無い学校だったらもっと他にゆうきが確実に入れる学校にしてるよ。確率は物凄く低いけど、当たれば天国、僕は昔からくじ運が良い。だけど…
「へぇー、知らなかったよ。物凄く嬉しいや。」
と軽く嘘をついた。けど嬉しいのは本当。
それから僕等は教室へ行った。暫くは名列順の席だから互いの席は離れるけれど、同じクラスならもうそれで良かった。あとはクラス内のゆうきを狙う野郎共を蹴散らすだけだった。
入学してから数日が経ち、友達が何人かでき、輪の中で話をしていたら、城下というちょっと派手で女好きそうな奴が言った。
「芹沢っているじゃん?あいつ可愛くねぇ?」
その場に居た僕と、同じ中学出身の伊庭の表情が変わる。それに気付いた城下以外の仲間も少し気まずくなる。
「え…?あれ?何で皆黙り込んでるんだよ?芹沢、可愛くねぇ?」
伊庭が言う。
「芹沢だけはやめとけよ。」
「は?何で?相当酷い奴なのか?」
「いや…」
と伊庭が僕の方を見る。
「え?吉岡が何?」
とまだ城下は気付かない様子だ。
「あのさぁ、ゆうきは僕の彼女なんだよね。だから手出すとかやめてね?殺すよ?」
「殺すって…おい…。わかったよ。可愛いなぁって思ったけど、吉岡の彼女なんだったら手出したりしねぇよ。俺だって友達できたばっかなのに失いたくないしな。俺ってばこう見えて寂しがりなんだよ。友達大事にしなきゃいけねぇだろ。女なんてその次で良いよ。本当だよ。信じろよな、吉岡。ほら、皆暗い顔すんなって、明るくいこうぜ?」
つかお前が寂しがりとかどうでも良いけど、良く喋る奴だなぁ…まったく。少しお前が暗くなれ。でもまぁ…良い奴そうだ。
「幸平!」
ゆうきが楽しそうに声を弾ませて僕達の所へ来た。
「何?」
「今日一緒に帰ろうね。」
「うん、わかった。」
城下は本当に付き合ってるんだ…とでもいうような少し驚いた顔をした。
ゆうきが去ってから、城下は
「お前ら何か幸せそうだな。誰にも引き離せないようなオーラが出てる。てか俺、芹沢の可愛さに圧倒されてたけど、良く見たら吉岡ってひょろそうだけど男前だな…おい。」
と言った。本当に良く喋る奴だが素直に意見の言える、人間としては素晴らしい奴だと思った。ゆうきに少しでも手を出そうなんて思ってたことは大目に見てやろう。
城下のことはもう良いとして、ゆうきのことを可愛い、付き合いたいと思う奴は絶対他にも居るはずだ。僕は絶対にゆうきを渡さない。気を抜いてる場合じゃない…。
―continue―
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