"ADDICTED TO YOU"
僕が生まれたのは4月6日、ゆうきがうまれたのは4月10日。家は隣。親同士がとても仲が良く、家族ぐるみで付き合い、双子の様に育てられた。
小学校へ上がり、僕は気付いた。
ゆうきが好きだ…と。
ゆうきはどんどん女らしい体つきになった。少し癖のあるふわふわした髪の毛が僕は大好きだった。キャンディーみたいに二つに結わえた髪形がすごく似合っていた。ゆうきが幼馴じみだということがすごくすごく得意だった。
ゆうきゆうきゆうき…僕の中身はゆうきばっかりだった。
中学に上がると、ゆうきは更に可愛らしくなり、男にモテるようになった。何度も別の男に告白されたという話を聞いた。僕はその度に心臓が破裂しそうな程焦った。僕もあの時、他の男みたいに告白していれば良かったのかもしれないけど、できなかった…。ゆうきが大切過ぎて…他の奴等みたいに軽い男だと思われたくなかったんだ。
―…ある日の放課後
「幸平、一緒に帰ろうよ。」
ゆうきが僕の教室にやって来た。
「一緒に帰ろうなんて来るの珍しいね…。いつも友達と帰ってるじゃん?」
「んー、ちょっと聞いてほしいことがあってさ。公園行きたい。」
「わかった…」
僕等は公園に向かって歩き出した。ゆうきの顔は何故か少し暗かった。嫌な予感がした…。
公園に着くとベンチに座った。ゆうきは地面に目線を落としたまま話し始めた。
「幸平ってさ…良い名前だよね。すごく愛されてるんだなぁって感じられる。」
「何?いきなり。何かあった…?」
「…私はゆうきって名前なのに…全然勇気が無い人間なの…。」
「は?だから何かあったのかって聞いてるだろ?何でそんな名前の話にこだわってんの?」
少し沈黙…
ゆうきらしくない雰囲気…いつもは明るくてすごくポジティブなのに、一体何があったのかを先走って想像すると苛々した。
「…好きなの…」
「え!?」
「幸平…私…高橋先生が…好きなの!!」
なっ何で高橋!?一体どういう事だ、何で…いつからゆうきは担任の高橋が好きになったんだ!?
パニック状態に陥る僕…
ゆうきに問う…
「じ…冗談だろ…?」
「冗談なんか言うわけないじゃない!!」
「…いつから?」
「1ヵ月ぐらい前から…。」
「何で高橋なの…?」
「…わかんない…わかんないけど好きなんだもん!!」
「実るわけないよ!!傷つく前に諦めろよ!!」
「好きな人って…そんな簡単に諦められるわけ?」
「…だけど…高橋じゃなくたって、他に男は沢山いるじゃないか!!」
「…興味が無いの。私…明日、先生に気持ちを伝えるわ。」
「勝手にしろよ…。」
僕は何が何だかわからなくなって、ゆうきを放ったらかして先に家に帰った。
「何で僕じゃないんだ…!!」
自分が気持ちを伝えないのが悪いんだけど、自分の気持ちがこうも伝わらないことに腹立たしくなった。泣きたくなった。だけど泣いたら本当に自分が馬鹿過ぎて惨めに感じられるからやめた。
―continue―
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