"ADDICTED TO YOU"
城下の言葉に少し後押しされたというか、自信持たなきゃいけないなぁという気分になった僕は、ゆうきに自分が思っていることを伝えてみることにした。放課後、屋上に来てくれと僕は言った。
校庭の桜が花びらを散らし始めていた。
「ゆうき…僕と結婚したいと強く思う?」
「え…?何でそんなこと聞くの?」
「良いから答えて。」
「…そりゃ…私は幸平のことが大好きだし、結婚したいなって思うよ。でも、何でそんなこと聞くの?」
「…僕には自信が無い…。」
「自信?」
「未来に僕たちの関係が続いている自信。」
「…幸平の気持ち、わからないでもないよ。だって未来はどうなるかわからない。」
「ハハッ…ゆうきがそんな風に言うなんて思わなかったよ。ちょっと頭良くなったんじゃない?」
「…真面目に話そうよ。」
「ごめん…。」
意外な姿がそこにはあった。
「幸平は私のこと、好きじゃないの?今まで言ってくれたことは全部嘘だったの?」
「嫌いなわけないよ。だけど、自信がない。怖い。」
「なら、考えなければ良い。」
「え?」
「不安になるなら考えなければ良いのよ。未来が怖いなら今を楽しく過ごせば良い。」
僕は無言になった。
そう凜とした表情で言ったゆうきはとても綺麗で、かっこよくて、全然馬鹿には思えなくて、寧ろ自分なんかよりすごく頭が良いのかもしれないと思った。
「大丈夫よ。心配しないで。怖いならいつでも言って。隠されてることのがつらいよ。」
鳥肌が立つような気分になった。ゆうきは僕の認識より遥かに強かった。それに、僕よりも沢山自信を持って生きているようだった。
「幸平は生きるとか死ぬとか、今とか未来とか難しいことを考えてるみたいだけど、そんなこと考えてたら幸せになんかなれないよ。だから…」
ゆうきの言葉を全て聞き終わる前に僕はゆうきを抱きしめてサラサラの髪に頭を埋めて言った。
「わかったよ…わかった。先のことは考えないようにする。今を…見つめるようにする…。」
僕は恥ずかしいような何とも言えない気持ちになって暫く顔を上げられなかった。
「帰ろ?」
ゆうきにそう言われてハッとし、ゆうきの目を恐る恐る見た。ゆうきは微笑んでいた。
美しい夕日が空に広がっていた…
僕はついつい考え込み過ぎる性格らしい。端から見たらどうでも良いようなことにこだわって考え過ぎたり、不安になり過ぎて倒れたこともあった。それが僕の個性なのかもしれないけど、明らかに長所とは言い難い。
今、考えてみれば、人っていうのは常に変化していくものなのに、ゆうきが飽き性で移り気なことにもこだわり過ぎていたと思う。実際、今のゆうきは浮気したりしないし、気にしてばかりいたころはある意味病的だった。
少し考え方を変えてみよう…。
僕だって変われる…。
沈み行く太陽をぼんやり見つめながら僕はそう思った。
愛しい愛しい人を信じられなくて、疑って、自信を無くして…そんな情けない自分の殻を脱ぎ捨てなきゃ前には進めない。
今日の僕よサヨナラ…
そう小さく呟いて引かれる手を強く握り締めて帰路を辿り始めた。
「何か言った?」
「いや…ゆうきは可愛いなって。」
「もー、幸平ってば何言ってんの!!ほらぁ、早く帰らなきゃ怒られるよ!!」
そう、こんな幸せな日を見ないで明日を見てはいけない。愛しいあの人の顔はこんなにも幸せそう…
―continue―
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