パステルグリーンの色彩で―5

長く続く生け垣の先に、時代劇にでもでてきそうな門が見えてくる。
「戻ってきちゃったか」
門を見上げると有紀はため息をついた。
自分の家なので、インターホンを鳴らすことなとせずに扉を開ける。
門を開けると、そこからまた道が続いている。やけに庭の広い旧家が有紀の実家だ。
恐らくは固定資産税や相続税はかなりの金額になるはずだが、それを払うのも平気な資産を保有している。
家の玄関にたどり着くまでに使用人たちと顔を会わせたりもする。
「おかえりなさい。ぼっちゃん」
等々の声に答えながら玄関につく。
「ただいまぁ」
そういって戸をひいたが、反応はなかなかない。
しばらくして奥のほうからパタパタと聞こえてくる。
「あー、ゆきちゃんだぁ。ママー、ゆきちゃんだよぉ」
妹の佐織だ。
「兄貴をちゃん付けで呼ぶな。それにゆうきだっての」
「いいじゃん。ゆきちゃんのほうが呼びやすいもん」
かなり和風な家に生まれながら、和風な女性には育っていない。
見ると奥から和風女性がやってくる。母だ。


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