パステルグリーンの色彩で―16

袋ごと冷蔵庫に食糧を放り込むと、有紀は佐織と別荘の周りを見ることにした。
記憶にある通りだとすれば裏手にテニスコートがあるはずで、車には一式積んできていた。佐織の要望によるものだった。
しかし、裏手に回るまでに、テニスはできないだろうと有紀は思うようになっていた。
「なにこれぇ〜」
有紀にしてみれば予想通りの光景を前に、佐織が不満を漏らした。垣根等もそうであったが、建物周りはまったく整備されてなかった。手落ちか手抜きかはわからなかったが、中だけしか掃除はしてなかったらしい。
「これじゃテニスなんてできないじゃん!」不満げな佐織をよそに、有紀はそっと安堵した。テニスなんてやったことがなかったからだ。
そんなこと知ってか知らずかさらに恐ろしいことを佐織は言う。
「せっかくゆきちゃんに教えてもらおうと思ってたのに」
神様ありがとう。
「ここにはそんなことのために来たわけじゃないの」
「避暑でなけりゃなんなのさぁー」
「それはまぁ、色々とだ」
「なによそれ」
説明するのが煩わしい。というかばかにされそうだ。有紀は佐織になんというべきか困ったすえ、
「夏休みの宿題のため」
小学生みたいだ。


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