パステルグリーンの色彩で―15
佐織にせかされて、有紀は一階へと降りていく。
食堂は玄関の反対側に位置している。そのため、二階からはかなり離れていると言える。回廊になっている真ん中に内庭があるが、建物が高いせいか全体に日が当たることはまずない。
「ゆきちゃん思いよ」「るさい。俺のがたくさん持ってんだから、あんま泣きごと言うな」
実際、液体関係を持っていた有紀の方がかなり重たい。佐織がどーしてもと言うのでミネラルウォーターまで買いこんだせいだ。
「さすがに広いね」
「まあな」
家族が顔会わせて囲めるようなテーブルなど置かれていない。端と端が離れすぎだ。住人が多いときならまだしも、有紀と佐織だけでは多きすぎる。
「ね、ね、あっちとこっちで食べようか?」佐織はテーブルの端を指しながら、無邪気に言う。
「とにかく、荷物を厨房まで運ぶぞ」
有紀はもちろん何度も見ていたので珍しくなかったが、佐織は記憶にも残ってないのだろう、初めてみるようにはしゃいでいる。それがまた有紀を疲れさせた。
「うわっ!おっき!」「家のだってこんくらいあるだろ」
「見たことないもん」業務用冷蔵庫を見ただけで佐織は感動できるらしい。
次へ
TOP