パステルグリーンの色彩で―12

見上げるほどの大きさだ。縦の大きさなら実家よりもある。
週に一度は掃除にきてもらっているらしく、住む人がいなくなっているのだが、雑草がのびきっているようなことはない。
「とりあえず、食糧とか中に入れるぞ」
「えー、あたしもやるのぉ?」
「当たり前だ!それはすでに言ってあることだろが」
幸いにも、電気やら水道などは止めてない。気が向いた時にいつでもこれるようにと、ほとんど来ることもないのに基本料のみ支払い続けている。今回は助かった。
だけど、食事の準備やら身の周りのことは自分でしなくてはならない。一人暮らしになれてきた有紀には、大した問題ではないが、佐織がはたしてついていけることかどうか。
特に、食事でだだをこねないかと有紀は心配していた。
「おれたちしかいないんだから、自分の分くらい自分で運べ。荷物を下ろしたら、おれは車を駐車場に置いてくるから」
「はぁーい」
あまりノリ気じゃない返事ではあるが、ついていくと言い出したのは佐織の方だ。有紀には面倒を全部見てやる気などさらさらなかった。


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