パステルグリーンの色彩で―10
「で、なんでこうなっちゃうのかな?」
母に教えられた別荘へ向かう車の中で、有紀はぼやいた。
「いいじゃ〜ん。佐織も夏休みで暇してたんだし。楽しそうだし」
助手席で佐織ははしゃいでいる。
交通の便が悪いため、車が必要なとこなのだが、幸いにも進路が早々に決まっていた有紀は、春休みに免許をとっていた。
「しっかし、まったく先がわからねぇな」
目に入ってくる景色に大差がない。うっそうと茂る緑と、たまにぽっかりと空いたエアポケットのような集落。絶えることなく続くようで不安になる。
「なになにぃ。いきなりへこんでるのぉ?空気はうまいし、絶景じゃん」
確かにそれは有紀も認める。窓を開ければ、エアコンを使う必要はまったくなかった。むしろ、自然の風のほうが心地良い。
しかし、それと今抱いている不安は別問題なのだ。
「道、あってるか?」
「えぇー!ゆきちゃんわかってて運転してたんじゃないのぉ!?」
さすがに佐織はのーてんきでいられなくなった。
「いや、分岐がほとんどないらしいから、間違うことはないと思うんだが」
「たよりないよぉ。どーすんの。こんなとこで野宿なんてやだよぉ!」
二人の不安は後少し続く。
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