傷跡―9
イブと言っても、私は結局仕事にいって、教会のミサに顔を出して帰宅しただけだ。
寂しいイブではあるが、自分から望んでいるようなものだから仕方がない。いくつかあった誘いをすべて断ったのだ。
寂しいのはいやだからといって、その気もない相手と過ごす気にはならない。
イブの明けた翌日、つまりクリスマス、いつもと同じようにオフィスに出社する。いくぶん疲れた顔をしていたのだろう、同僚のリザベルが声をかけた。
「ジニー。顔色悪いわよ。イブに分かれ話でもしたの?」
時期のせいで恋愛話を持ち出したわけではない、リザはいつでもからめたがる。
「そんなんじゃないわよ」
「つまらないわねぇ」リザは興味をなくしたのか、ファイルの整理を始めた。
そこへ一本の電話が入った。ソーイチローからだった。
「ジニーか。俺の依頼の支払いはどうなってる?」
「たしか、銀行へ後払いで振り込まれるはずだけど」
「それじゃ、依頼人が死んじまった場合はどうなるんだ?」
「えっ!?」
私は聞き返さずにはいられなかった。
「依頼人が襲われたんだよ。まだ死んじゃいないがな」
「今どこにいるの?」すでに私はそこに向かうつもりでいた。
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