傷跡―10

ソーイチローにむりやり聞き出した場所は市警だった。
わたしの勢いをそらしきれなかったソーイチローは、あきらめて市警の近くにあるカフェに来るようにいった。わたしは、リザベルに後よろしくと言って無責任に職場から出ていった。いつもはわたしのほうが、リザベルの遅刻やらずる休みやらをそれとわからないように報告しているのだから、舌打ちの一つくらいで許されるはずだ。まだ上司の出勤前で助かった。
わたしはサブウェイを使って向かっていた。ここ数年でニューヨークの治安は格段によくなった。それまでは、今のように気軽にサブウェイになんて乗れなかった。
治安がよくなったのは、ニューヨークの裏側ハーレムでもそうだ。にも関わらずわたしたちが扱う仕事はなくならない。治安はよくなろうとも不安は消えあることはないということだろうか。
わたしが物思いにふけっているとサブウェイは目的のステーションについていた。
わたしは慌ててサブウェイから降りた。


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