傷跡―7

第二話

ソーイチロー・クガについて私が知っていることは少ない。ルックスからして東洋人らしいと思い、名前にマリナーズのイチローが入っているので日本人であるとは分かった。なにより、彼の前歴は自衛隊だった。
私はいまいち自衛隊というものをよく知らなかったので、実践経験のまったくないインストラクターとしてはあまり使えないと思っていた。
けれど、どうやらソーイチローに関してはそういったことはないようだ。紹介された仕事はきっちりとこなし、ミスがない。私が安心して仕事を紹介できる一人になっていた。
けれど、彼が受ける仕事は、あくまでも一般人の自衛のためのインストラクトのみで、多少の危険は出てくるものの、もっと報酬のよい仕事を回そうとしても笑顔で断るだけだった。
それがなぜなのか、私が知ってしまうことになるのは、ソーイチローがある仕事をしたからで、そのせいでソーイチローの傷跡が大きくなってしまうのを私は感じずにはいられなかった。
あれは、イブが近付き街中がいろめいてきたころのことだった。
「やぁ、ジニー。もうすぐイブだね」
「なに、ソーイチロー、それって誘ってるの?」


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