傷跡―5

エリンの言葉は次第に重くなっていくのがわかった。
「母さんは、出所した親父が自分を殺しにくるんじゃないかって考えたらしい。そのせいで、訓練の以来をしてきた」
「じゃあ、ただの妄想だったの?」
「だったらよかったんだ」
エリンは言葉を切った。
「親父は何をどうやって調べたのか、母さんの家までやってきた。目的がなんだったのかはわからないが、母さんは迷わず発砲した。俺がいれば、そんなことさせなかった。だが、夜だったせいで俺はいなかった」
「なんで!?自分の母親なんでしょ。一緒にいればよかったじゃない」
「それは母さんが許さなかった。あくまで俺はインストラクターでしかなかった」
「じゃあ」
「あぁ、訓練していた。それが、まさかあんなことになるなんて。母さんの自己満足で済めばと思っていたのに、両親の殺しあいになるなんて」
一滴の涙が、エリンの持つグラスに落ちた。
「発見したのは俺だ。二人とも死んでた。最悪なことに、親父は確に俺も殺そうとしていたんだ」


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