傷跡―2
「たいして大変でもないけど、稼ぎはいいなんてそうそうないわ」そんなことを言いながらも私はファイルを一つ渡した。
「なんだあるじゃん」
「本気でやるかどうかよ」
個人的に親しくなったせいか、私は多少わりのよさそうな仕事を回すようになっていた。
「六十間近のおばさんが、なにを考えたのか実践的な戦闘訓練を受けたがってるの。相手の年が年だから報酬がよくてもよりつかなくて」
そこでエリンの様子がおかしいことに気が付いた。
ファイルをくいいるように見ている表情からは、いつもの陽気さは消えうせていた。
「どうかしたの?」
「いや、なんでもないさ。この依頼は俺が受ける」
ハッとして元の顔に戻したが、動揺しているのは隠しきれない。
「ありがとう。この礼はするよ」
そう言うと、エリンはすぐにでていってしまった。
ジニーが次にエリンとあったのは、エリンの仕事の訓練期間が終わる一週間前のことだった。
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