傷跡―13
別にそこまでして聞かなくてもよかったんだが、フレッドの目が真剣だったから、仕方ないとついていくことにした。
ミサなんていうのは当然初めてで、讃美歌なんて聞いたこともない。俺には退屈極まりないものだった。
横を見ると、フレッドの目には涙まで浮かんでいた。さすがに俺はあくびを噛み殺した。帰り道、これでいいだろうとフレッドに聞こうかと思っていたんだが、俺は誰かがつけてきていることに気が付いた。
つかずはなれずの距離をキープしていた。プロというには粗雑な尾行だった。フレッドにはそれは言わないでいたが、気が付いていたんじゃないかと思う。尾行してきた奴がその意思を表に出したのは、フレッドの家までついたときだ。
かすかに、しかし、確実に聞こえた金属音は、撃鉄をおこした音だった。
俺は、玄関の扉に鍵を指しこんでいたフレッドを蹴り飛ばした。
その反動で、俺も芝に倒れこんだ。
銃声は聞こえなかった。サイレンサーを使っていたせいだろう。しかし、ドアに三つ穴が空いた。
さっきまでフレッドが立っていたところだ。尾行者は、フレッドであることを確信してから狙撃してきたのだろう。
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