傷跡―12
クライアントはアイルランド系のアメリカ人で、フレッド・キーンと言った。
IRAなんかには参加していなかったものの、UKにあまりいい印象は抱いていないようだった。
韓国の日本のようなものなのかもしれないが、対立が今も続いている分根深いのだろう。俺が出身について聞いただけで、怒りをあらわにしてUKについて話出した。
俺はなだめてみたのだが、憤りがすぎると今度は逆に沈んでしまった。
だが、トレーニングとなると鬼々せまるものがあったように思えた。
もちろん、自己防衛の手段を教えるのが基本なのだが、フレッドはトラップの仕掛け方まで教えてくれと言ってきた。
そこで異常さに気が付きはしたんだが、俺がなにかすることもないだろうと思って要求に答えた。
それでも気になった俺は、トレーニング終了になるイブの日、フレッドを問いただした。すると、フレッドはミサにでもいかないかと言い出した。
俺はキリスト教徒じゃないから、断ったんだ。それより、話をそらすんじゃないと。
フレッドは、それでも俺に頼んできた。それが終わったら話すからと言って。
次へ
TOP