聖夜は眠れない―9

美和子は三崎がトイレに入ると、自分もトイレのドアまで来た。
中からうめき声のような悲鳴が聞こえたため、意を決した。
「それをね。一緒に処分してほしいの。あなただから頼むの、お願い」
いくばくかの間があって、トイレのドアが開いた。
「できないよ、そんなこと。自首しなよ。そのほうがいい」
ダメ、それじゃダメなの。そんなことのためにあなたを呼んだんじゃないのに。
「このままぼくが見逃したりしたら、ぼくまで罪に問われる。だから、自首してくれなきゃ、ぼくが通報しなくちゃならなくなる。そんなことはさせないでくれないか」
そんなこと、させるわけにはいかない。
「なんで、なんで手伝ってくれないの?お願い、これで捕まったりしたら、自由になった時にはおばさんよ。そんなのイヤ!」
「必ずそうなるなんてわかないよ。情状酌量とかあるんだし」
「無理よ!普通の生活には戻れないわ」
「それは逃げたって同じことじゃないか。普通に生活なんてできない」
「だから、あなたを呼んだのよ。一緒に逃げて」
この一言は効いたみたいだった。


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