聖夜は眠れない―10
三崎は動揺しているようだった。犯罪と美和子を手にいれるのと、両方手放すのとの比重を考えているのだろう。だが、悩みにはあっさり答えがでたようだ。
「やっぱりできないよ。それは無理だ」
美和子には絶望にも近い響きだった。
これじゃあ、他に誰に頼めばいいというの?その前にこのまま帰せるわけないじゃない。美和子は手探りで、シンクの下の開きから、包丁を取り出した。
「待って、なんのまね?それは」
美和子が玄関のほうを塞いで立っているため、三崎は部屋の奥へと後退りする。
「できるわけないじゃない!あなたしかいなかったのに。どうすればいいのよ!」
美和子は自分でもなにを言ってるのかよくわからなかった。が、すぐに引き戻される。
ピンポーン
唐突なチャイムだ。
そしてすぐにわけがわからなくなる。
「警察だよ。ぼくが呼んだ。早くでたほうがいいんじゃない?」
わけがわからなくなった。
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