聖夜は眠れない―11
陽一は、美和子の様子が危なくなってきていたので、待ち人が早くくることを願っていた。チャイムが聞こえた時には「遅い」と心の中でつぶやいた。
陽一が警察だと言うと、美和子は呆然と立ちつくした。
「これだよ」
そう言って陽一はポケットから携帯電話を出した。
「友達に通話状態になっている。あぶなくなったら警察を呼ぶように頼んでおいた」
そのせいで、美和子からの「一緒に逃げて」なんて魅力的な提案にのるわけにはいかなかった。なにしろ会話は聴かれているのだから。
「それじゃあ」
「そう、手違いさえ起きてなければ、ドアの向こうには警察がいるはず」
「じゃあ、始めから警察を呼ぶつもりで、手伝う気なんかなかったの?」
「前者はノー、後者はイエス。自首するなら呼ぶことはなかった。手伝う気はないよ。だから、できないって最初からいってただろ」
いまだによくわかってない様子の美和子だったが、それでも立て続けに鳴らされるチャイムに導かれるように、玄関へと向かっていった。
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