聖夜は眠れない―12

ふらつきながら玄関に向かう。手に持った包丁は、さすがにまずいと思いキッチンに置いておく。
ドアまで近付くと、美和子がロックを外す前にドアが開いた。ロックがされていなかったということか?確かロックはと、美和子ははっとして振り返ると、三崎はソファに座り紅茶を口にしている。美和子の視線に気が付くと、口許に笑みを浮かべた。あの時、三崎はもしもの時、外から開けれるようにロックをかけたふりをしていたということか。
「警察の者ですが」
私服をきたその人は、映画で見たFBIの手帳のようなものを見せた。
「あの、本当に警察のかたですか?」
その人は、美和子の視線が自分のもってるものにいっていると気が付き、
「あぁ、これですか、十月から変わったんですよ。おかげでよく疑われます」
刑事は微笑んだ。
「それで、ここで殺人が起きたと聞いたのですが」
「あの、それは」
その続きは、
「ちょっとしたお芝居だったんですよ」
「けんちゃん!」
ユニットバスからでてきた健治が継いだ。


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