聖夜は眠れない―13

「ちょっとした稚話ゲンカだったんですよ。別れるだの別れないだの、そのうちオレより大切にしてくれる人くらいいるとかいいだして、まぁ、こんな展開になっちまいまして」
ユニットバスから出てきた、けんちゃんと呼ばれた男は、頭についた赤いものをいまだに拭わずにいた。
「まぁ、そんなとこですから、お騒がせしましたね。三崎くんのお友達さん」
けんちゃんの言葉に驚いたのは美和子だけだった。
「ふーん、驚いてないところを見ると、やっぱりそうか。大体、普通は近くの交番のお巡りがくるもんだからな。それに、一人で私服刑事が来るってのはおかしいからな。よく揃えれたもんだ、新しい手帳の偽物まで用意してるとはね」
そこまで言われるとは思わず、陽一はついに吹き出して笑い出してしまった。
「笑いごとじゃねぇぜあんた。警察に突き出す気もないのに、みわのことからかいやがって!」
けんちゃんは陽一に近付き胸ぐらを掴み、無理矢理ソファから立たせた。
それを見て笑い出したのは原田だった。


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