聖夜は眠れない―5
陽一が飲み屋からでると雪がちらついていた。
ホワイトクリスマスになるんだと思い、気分が浮足だってきた。 しかしそれも長くは続かなかった。少しだけはいっていたアルコールが、冷えた気温で一気に冷まされたからだ。
そうなると美和子からの電話が不思議に思えてきた。
「九時か」
腕時計を見ると、陽一は口にだして言った。これから素直に美和子のマンションに向かおうとすれば、電車で二十分くらいといったところ。
しかし、と陽一は考える。よくよく考えてみれば、クリスマスに自分がなぜ呼ばれるのかわからなかった。
美和子が彼氏と別れたという話は聞いていない。もっとも、別れたとしても陽一のところまで伝わるとは限らないが。
だとすると、クリスマスだって彼氏と過ごすのが普通だ。
果たしてこのまま行ってよいのだろうか。陽一は地下鉄の入り口に入ろうとして、そこで止まってしまった。
後ろを歩いていた人からは変な目で見られたが、陽一は気にならなかった。
「保険はかけておくべきか」
そう思いたってから陽一は動きだした。
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