B-Wars
アパートから駅までは歩いて約十分。ほぼ一直線に進めばいい上、坂になっているので、自転車でも使えばかなり早くつけるだろう。にもかかわらず、未季也は歩く。自転車を持っていなかったから。朝は人と擦れ違うことが少ない。近くに住宅もあるのだが、そこの住人はバスの利用者が多い。
また、始業時間のズレから、学生と会うこともあまりない。
未季也と擦れ違う。それはつまり、そいつが遅刻しているということだ。
いつも通りの道だったが、いつもと違うことが起きた。
前方から必死になって走ってくる奴がいる。制服は着ていないので、遅刻しそうであせっている学生というわけではないようだ。
それより奇妙なのは、そいつが走る後を、ワンテンポ遅れて街路樹が倒れていくことである。さながらドミノのように倒れていくが、簡単に倒れるようなやわな木じゃないはずだ。
走ってくる奴が近くまできて、未季也はやっとそれが知ってる奴だということに気が付いた。
従兄弟の光だった。
「うわぁあ〜。逃げろぉ〜、未季也ぁ〜」
未季也には何がなんだかわからなかった。
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