財布の落とし主
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「…君、早く逃げた方がいい。ここは危険だ」
大柄な男は右腕を押さえながら、法子にそう言った。
もちろん法子としては、その忠告に従いたいのだが、足が震えて忠告を聞かない。
そうしている間に、大柄な男は体勢を立て直すと、動けないでいる法子をかばうように法子の前に立ち、細身の男に対峙した。
傷を負っている分、大柄な男が不利なのは明らかである。
細身の男は、血の付いたナイフを握り締め、勝ちを確信したかのように不気味な笑みを浮かべた。
不意に法子の背後から声が上がる。
「川本ッ、伏せろ!」
大村の声であった。
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