千姫の詩

夢月夜
―12―
寒桜…

そう、寂しかったのよね

昔は家族や屋敷の者たちとあの桜を囲んでお花見をしたわ

でも花が咲かなくなるとみんな遠ざかって…

あなたは誰かの気をひきたかったのよね…

『琴姫、もうここから出よう。またあの寒桜の夢に絡め取られてしまう。』

『ええ…。ここを出たら、またあなたに会える?』

『…あなたには他に大切な人がいるはずでしょう?』

『え…?』

『…。』

『海部の宮様のこと…』

『俺ではあなたを幸せに出来ない。』

『私は…。』


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