闇家(68)
「桜井君…幸せだったのかな…」
放課後の屋上で、一輝と敏樹は並んで夕焼けに染まる町を見おろしていた。
「さあ…でもあの時の表情、あれはきっと、森野といられて心底嬉しいって感じだったのかもな…」
あの屋敷を脱出してからもう一週間が過ぎていた。
桜井忍と森野志穂。生徒二人の死は学校中を震撼させたけれど、彼らの友人以外は大半がすでにそのことを忘れかけていた。
「ここにいたの。」
「お…安部。」
「やあね、男二人でたそがれちゃって。」
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