闇家(64)

「忍!」
初音はどうしても伝えたかった。
志穂はすぐそこにいるのに、忍は目の前の現実に捕らわれて動こうともしない。

初音は意を決して忍に向かって行った。
そこへ、すかさずあの化け物が立ちふさがる。初音に恐怖はなかった。それよりも、忍を正気に戻すことが先に頭の中に浮かんでいた。
「忍!!
離して…っ!忍!」

いつの間にか一輝もそれに加わっていた。敏樹でさえも。
「桜井!しっかりしてくれっ」
「桜井君…!何で見ようとしないんだよぉ…」

[完全に無気力状態ね…でもそれでいいわ…]


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