闇家(50)
「志穂…負けちゃったの…?」
初音が弱々しい声を出した。
忍も気付いた。そこに立っているのは、森野志穂ではなく、さっきまで彼女を苦しめていた存在なのだ。志穂の意識と入れ替わって、目の前で勝利に微笑しているのだ。
[永かった…ついにこの時が来た…]
そう囁いて、また口元を歪ませる。明るい志穂の姿はどこにもない。
「志穂!目を覚まして!」
「畜生!忍!何とかならないのか!?」
「志穂…。」
忍はどうにもならない脱帽感で立っているのがやっとだった。
ごめんな…お前は助けを求めてたのに…
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