闇家(30)


月曜の朝、忍は少し肌寒い空気の中、団地の路上を歩いていた。

「桜井ーっ!」
朝から陽気な声で駆けて来るのは、同じクラスの鳩山一輝だ。
「…朝から元気だな。」
忍はちょっと苦笑して言った。
「昨日例の娘と遊んだんだ!まあ、いわゆるデートってやつ!?すっげかわいんだよな♪」
「そっか。じゃ、敏樹が泣くな。」
蔭山敏樹とは、こちらも忍と同じクラスの生徒だ。14年間交際歴なし。イイ奴なのだが、そこで終わり。友達以上には見られないという悲しい男でもある。

「…そういえば今日森野は?」

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