闇家(3)
夫人は今でも夫を探して館をさまよっているらしい。嘘か真か、近所の小学生が窓辺に立つ女性を目撃したという話もあった。
忍と志穂も、この噂を聞き、たちまち興味を持った。しかしいざ目の前にすると恐ろしいらしく、志穂の方は縮み上がって小さくなってしまったのだ。
「よし、じゃ、入るぞ…おい、いい加減放せよ。」
「だって…」
志穂は相変わらず忍の腕を強く締めつけていた。忍はあきらめて、両開きの大きな扉を押し開けた…。カビっぽい湿った空気が鼻をついて、忍は顔をしかめた。
志穂は目を堅く閉じている。
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