続・この恋の行方16
「…でね、その小作人の娘が好きだった花が彼岸花だったんだって。」
「駆け落ちで心中?ほんとにあるんだ、そんな話。」
朱美と利明は部屋に戻っていた。朱美はあの老婆から聞いた悲しい恋物語を利明にも聞かせていたのだ。
「でも、何で朱美がその花を見るんだ?」
「わかんないよ。お婆さんには気味悪がられるし、嫌な気分。」
そうは言っても、朱美の箸は目の前の料理の山の上を行き来していた。
利明はただ苦笑してそれを眺めた。
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