Knight
―24―
三年前…シゲンがまだ騎士団にいた頃、シゲンとレーカは恋人同士だった…。そして、レーカにはたった一人の肉親であった弟・リュウがいた。
リュウはシゲンと同じ部隊の騎士であり、入隊当初から天才的な才能を発揮して、将来を期待されている存在だった。
そんなとき、北部の内乱によりシゲン達の部隊は北部へ遠征することとなった。
内乱の鎮圧は、北部地方の独特の寒さと、高い山々が連なる地形により困難を極め。シゲン達の部隊は散り散りになってしまっていた。
山道を歩くシゲンとリュウは、大雪と寒さの中であとひと山越えれば本部に到着できるところまで来ていた。
「大丈夫ですかシゲンさん…、あと少しですからね。」
疲れ果てたシゲンをかばうようにつり橋のかかる谷まできたリュウは、つり橋を見て愕然とした。
つり橋を支える綱は、人一人を支えるのが精一杯にまで老朽化していて、とても怪我をしたシゲンを背負ってリュウがわたることが困難そうに見えた。リュウは困ったが、後ろから追いかけてくる反乱軍のことを考えた。
「シゲンさん、先に橋を渡ってください。」
リュウの突然の発言に戸惑っていた。後から渡る方は、反乱軍に襲われる可能性が高いことは、火を見るより明らかである。シゲンにとって部下であり、なおかつレーカの弟のリュウをそんな危険にさらすことは、騎士のシゲンとしても許せなかった。
「お前が先に行くんだ…。」
鋭い口調で返すシゲンに対して、リュウは一歩も退こうとせずにシゲンを橋の袂まで引っ張りながら言い放つ。
「何を言ってるんですか、怪我をしているシゲンさんを置いていけるわけないでしょう。意地を張ってないでさっさと渡ってください。」
リュウの言うことも一理あると、シゲンも感じていた。怪我をしたシゲンが後から行くということは。反乱軍が来たときに、格好の的となってしまう可能性が高かった。
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