Knight

―25―
「…わかった…。」
リュウを残すのは気がひけたが、そうすることが最善の方法だというを自分に言い聞かせながら、シゲンは橋を渡った。
ギシギシとゆれる橋は、今にも落ちそうな悲鳴をあげている。橋はさほど長くはなかったが、怪我をしているシゲンには辛いものであった。
時間をかけながら渡っていくシゲンの下には、冷たい急流が音を立てて流れている。怪我をかばいながらシゲンはようやく橋を渡りきる頃に、後ろから大勢の声が聞こえてきた。
驚いて振り向くシゲンの眼に飛び込んできたのは、十人以上の反乱軍に囲まれたリュウの姿であった。
リュウは反乱軍を相手に、懸命に戦ってったが、天才といわれた才能ある騎士もさすがに十人以上の反乱軍を相手にすることは厳しかった。
一人の反乱軍の剣が、リュウの兜をはじき、そのままリュウは橋の上に投げ出される形で倒れこんだ。
「リュウ!」
橋を渡りきっていたシゲンは、ただ見つめるだけしかできない自分を悔やみながら、戦いの行方を見守るしかなかった。一方、倒れこんだリュウは自らの剣で敵の剣を遮っていたが、先ほどの一撃にで額からは大量の血が流れていた。
橋上に戦いで、ギシギシと悲鳴を上げるつり橋の不気味な音を心配しながらも、リュウはひたすら相手の攻撃を剣で返すことが精一杯であったが、相手が剣を振り上げたとき状況が一変した。
「ぶちっ!」
つり橋を支える徒綱の切れる鈍い音とともに、橋上のリュウ達は冷たい急流へと落ちていく。
「リューウ!!」
リュウ達の姿が、急流へと消えた後、シゲンはしばらくその場で泣きつくしいた。
そして、その後シゲンは本部の騎士達によって助けられたが、リュウは行方不明のままで、北部遠征は反乱軍の鎮圧とともに幕を下ろした。
それから、一ヵ月後…シゲンは騎士団から脱退をすることとなった。

続く
TOP