Death
―93―
鏡に映し出された5つの影。その影は容姿がまるで違うが明らかに死神と思える姿かたちをしていた。
「この鏡は人の心…内面を映し出す鏡。今は死神の心を映し出しています。死神はあなた方が知っているように5つの人格を持つ人物。故に…この鏡には5人の姿で映し出されるのです。」
死神の心。
真っ黒でもなく真っ白でもない灰色の世界。
人物だけが浮きだって見える。
そして一つの棺が空を漂っている。

風が呼んでいた人格で表すとセカンド、サードが今まで見てきた死神の姿だが、若干セカンドの方が愛相が良く感じられる。っというよりサードは無表情だ。
ファーストはまるで死神を女性にしたような姿。フォースは一人だけ出会った頃の死神のようにマントを羽織って、顔を見せていないが明らかに殺意を感じさせる雰囲気があり、既に大鎌を持っている。
そして最後に残ったフィフスは風より小さい6〜8歳ぐらいの少年。しかし顔と右腕の一部は包帯で見えないように隠されていた。
それぞれの人格があたかも異物を見るように見つめている。
今まで一つの体で交互に現れていた存在。他の人格があると知っていても直接在ったことは今までには無い。
それぞれ皆性格が違えばまた考え方も違う。
しかしその結果は一つ。
「この自分以外の人格がいなければこの体は独占できる。」
っと・・・。
その考えはすぐさま五つの影を動かした。
一番先に動いた人格はサードだった。
無口で何を考えているかわからない人格ほど行動力があり、そして先に先へと物事を冷静に考えていた。
サードが相手として選んだのがフォースだった。サードが動くとつられて後のファースト、セカンドがいっせいにフォースを集中攻撃する。
それほどまでにフォースは他の人格にも恐れられていたのだ。
フォースはまるで人を殺すのを遊びでしか思っていない人格・・・攻撃を仕掛けることは自殺行為としか言い様が無い。
死神の心はフォースが鎌を振るうに連れて、どんどん灰色の風景が色を増していく。
そして3人の人格はフォースの手の内に飲み込まれていった。
二人っきりになった死神の心。
フィフスは独占したいとは思うが太刀打ち出来ないことを理解していた。
しかし逃げようとも、フォースは自分自身でもあるため逃げることは出来ない。
ただ逃げ惑うフィフスはあの黒い翼を広げ、空に浮かんだ棺へと手を伸ばした。
すると突如棺は光りだす。
鏡は光に反応して異常なまでの光を発し、物の見事に粉々に砕け散った。



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