Death
―90―
「おいおい。久しぶりに逢っていきなり大声かよ。」
彼は呆れながら椅子に腰掛けた。
真っ黒な髪に紫の瞳、その男は親しげにアマトと話す。そして彼は死神とも面識があった。
「相変わらずあんた若いよなぁ…俺がガキの時とまったくかわらないし…こいつの事知ってるしさぁ…あんた一体何者?」
アマトにとって『こいつ』とは死神のことらしい。そして炎の使い方を教えたのもこの男、アルだった。
死神はいつのまにやらサードの人格になっており、聞いている分で話そうとしない。
また風も二人の親しげな会話に入る余裕がなかった。
「何者?前にも言ったがそれだけは教えることはできん…。……まぁ、さしずめ君たちの良きアドバイザーってことかな〜♪」
彼はアマトには聞き覚えの無い横文字で答えごまかした。
「はぁっ……?じゃあこいつのこと知ってるんだったら、こいつの人格どうにかしろよ!!前ある程度のこと出来るって言ってたよなっ!!」
「ん?まぁ…たしかに言ったなぁ…人格が多いのもやっかいだし…俺も実際こいつの本当の人格知らないしなぁ…たしか出会ったときはすでに3つ以上はあった…。」
アルは頭を抱え、何か思い出そうとしているがなかなか思い出せないらしい。
彼が悩んでいると、何の気配もなしにスーツ姿の男性がアルの真後ろに現われた。
「アル様…こんなところにいらっしゃいましたか…お仕事を済ませてから一言いってから遊びに出掛けて下さいよ…。」
「…………スペリス……たまには違うセリフいえないのか?」
深く座り込んだアルは足を組みなおし、持っていたほねつき肉を大きな口で一口食べた。
「アル様!!食事なら帰ってから食べられます!!早く仕事場に戻らなければ私が怒らますので……」
スペリスと呼ばれた男はアルの肩を掴んで連れていこうとした。
「……ったく……わかった、わかった……。スペリス!!馬車の準備をしろすぐに帰るぞ」


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