カチカチ
火事はその木造家屋一件、全焼するほどの火事だった。
焼け跡からは一人の女性の焼けた死体が現れた。
この火事は食事を作る最中の不幸な事故として扱われ、誰一人として殺人だとは考えなかった。
数ヵ月後。
一人残されたじいさんは毎日のようにばあさんの墓を通っていた。
「なんで先に。。。わしを置いて・・・。」
ただの事故として処理され、ばあさんの財産だけがむなしく残っていた。
いつまでたってもあの日のようにばあさんは帰ってこない。
あの時わしは・・・
そんな気持ちでいっぱいになり、すこしでもばあさんの墓石を綺麗にしようと必死になって掃除をしていた。
全てを無に返すため・・・
「じいさん・・・・あれから心配したよ。ばあさんの葬儀の跡からまったく連絡取れなくて・・・」
急に聞こえた聞き覚えのある声に暗く沈んでいた思いが吹き飛び、とっさに振り向いた。
「あぁ・・・宇佐義君それに・・・。」
「あ・・・俺宇佐義の友人で、田抜っていいます。」
青年二人は花束と線香をばあさんの墓の前に供え、手を合わした。
「ひさしぶりだな。宇佐義。おまえのところまで燃え移ってしまって、引っ越して連絡取れなくなったて、心配で心配で。。。こうしてここに来てもらえて、ばあさんきっとよろこんでいるだろうな。」
じいさんはうすらと目に涙を浮かべ、ばあさんの遺品である数十年前にあげた指輪を手のひらに乗せた。
「これは運命だったのかもしれん。苦しみながら死ぬよりは本望だったのかもと思う日もある。」
じいさんは指輪を強く握りしめ、まるで全てを受け入れようとしていた。
「じいさん俺、何も出来なくて・・・。ただ黙って燃えている様をみるしか、、、」
田抜は黙って二人の側を離れた、ここは俺がいる場所じゃないと。。。そして二人っきりにしてやった方がいいと考えたのだ。
次へ
TOP