カチカチ

とある一件屋・・・。
「ばぁさん・・・。また妙な事件が起こったぞ・・・。」
「ここも昔と違って物騒になりましたねぇ・・・」
老夫婦がいつものようにテレビを見ながら食事を取っていた。
最近のテレビは、皆この奇妙な連続殺人の特集を組み報道しているのだった。
「今日のこの鮭はうまいな。この塩加減がたまらんね・・・。」
「えぇ。商店街の魚屋さんを覗いたらちょうど安売りしててねぇ」
テレビと違いこちらは普通の食卓の会話が続いていた。
「そうそう・・・。たしかその魚屋さんに新しく働いている男の子、宇佐義君の友達なんですって・・・。」
「へぇ・・・隣のとか・・・」
宇佐義(うさぎ)君はこの老夫婦のすぐ隣に住む一人暮らしの青年だった。よくばぁさんはこの宇佐義君のために夕食を余分に作りごちそうしていた。また彼もこの老夫婦に何かあるとすぐに飛んできていろいろと助けてもらっていた。
食事も終わり、ばぁさんは食器を片付けていると、ピンポ-ンと人を呼ぶ呼び鈴が鳴った。
「じぃさん、ばぁーさんいるか?」
玄関で大きな声を出す。
「あらあら・・・噂をすれば・・・。」
ぱたぱたと玄関まで行き錠を空けると、ダンボールいっぱいに野菜をどっさり持った宇佐義の姿があった。
「今日はどうしたの?その野菜は・・・。」
「ん?これ?田舎の母さんから速達で二つも来たから・・・今年はいっぱい取れたって贈ってきたんだよ、俺こんなに食べれないからさぁ〜ばぁさんにやろうと思って・・・。」
彼は玄関の入口にダンボールを置くとうれしそうにばぁさんに話す。
「こんなに貰っていいのかい?」
「あ〜いいよ。いつも晩ごはんご馳走になってるしさぁ。」
「じゃぁ・・・お言葉に甘えて・・・。」
ばぁさんはダンボールを持とうすると彼が突然ダンボールを持った。
「これ重いから運ぶよ・・・。どこまでもってけばいい?」
「悪いわねぇ。台所まで持ってきてもらえるかしら?」
「あぁいいよ」
宇佐義はこの老夫婦を本当の祖父母のように接していた。この後いつものように晩飯の鮭をご馳走になるのは言うまでもない・・・。


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