傷跡―16
「それで、ソーイチローはどうなるの?」
「どうなるって?」
「だって、あなた、襲ってきた人を撃ってるじゃない」
「そういうことか、大丈夫さ。弾は骨に当たって止まってたんだ。深刻な怪我じゃないんだ。だから、まぁ、正当防衛ってことで不起訴だろう。なにせ、相手は殺人未遂だ。感謝されたくらいだ」
そういうことか。でも、クライアントが危険なのではまだ安心しきれないだろう。
「さ、もういいだろう?」
これで終わったとばかりにソーイチローは立ち上がった。
「待って、あなたは、なぜあの時すぐに撃たなかったの?」
ソーイチローは座り直した。
「あなたが撃っていれば、フレッドは撃たれなかったかもしれないわ」
ソーイチローは黙ったままだ。
「どうしてなの?」
ふれるべきでなかったかもしれない。わたしが謝ろうとした時、
「PKO。自衛隊が、戦場に初めていったやつだ。ジニー達にしてみれば、終わってしまったそこを戦場とは言わないのかもしれない。だが、俺には十分な衝撃だった。だから」ソーイチローはそれ以上語らなかった。
インストラクターの仕事しか受けなかったのはそのせい。
ふれなくてもよかったはずの、傷跡。
続く
感想を書く
TOP