記憶
―29―
森若は目の前にいる、とても高校生とは思えないその少年を見た。
秋は、不思議そうな顔をする森若を見てクスクスと笑いだした。
そして小声で
「…君…那智君だね…?」
と囁いた。
「!…お前っ…。」
驚いた森若は手を引いた。
「クスクス…なんで知ってるのかって顔だねぇ…。」
秋が見透かしたように笑う。
「…那智はここにいるよ…この旧校舎に。魂のない……肉体だけの那智がね。」
秋はクスクスと笑いながら驚く森若を残し、片瀬と他の生徒達と去っていった。
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