夜空の旅人

プロローグ

「お一人ですか?」
列車にゆられ窓から外の風景を見ていると、通路側から一人の女性が現れ、こちらに声をかけてきた。あたしは、自分が座ってる側と対面している席に、どうぞ、ばかりに手を向けた。
「ありがとうございます。他に席も無かったものですから……失礼しますね」
女性――まだ少女と言った方がいいか――は、にこりと笑って腰をおろした。

……なるほど、"あいつ"の好きそうなタイプだ。

あたしが"あいつ"の名前を呟くと、彼女はびっくりしたようだ。
「彼を――あの人を知っているんですか?」
そう尋ねてきた少女に、あたしは意地の悪い――"あいつ"が言うには、だが――笑みを浮かべて、こう――言った。

――はなしをきかせてくれないかい?――

と。


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