夜空の旅人
1.
彼が来たのは月のキレイな夜でした……
その日、彼はふらりと家に入ってきて言いました。
「泊めては頂けないでしょうか?何日になるか、分かりませんが、お金は払います」
いきなりの事に、両親はすっかり驚いてしまって……
……わたしはというと、彼の容姿に魅入られてしまっていました。
金色の目と髪
肌は透き通るように白くて……キレイでした。
そして、その容姿とは正反対な、ボロボロの外套。
よく旅の人が身に付けている、彼に不釣合いなはずのソレは、何故かヒドク似合っていました。
「ええ、いいですよ」
と父は言いました。
もともと人のいい両親の事です。断らないだろうな、とすぐに分かりました。
「ありがとうございます。助かりました。この村には宿が無かったものですから」
彼は本当に嬉しそうにしてそう言いました。
この辺境の村に旅人は珍しいですから、もちろん宿なんていうものはありません。だから、たまにお客さんがくる事もあります。ですけど、こんなキレイな人は見た事がありませんでした。
「ああ、そうだ。お金はいらないけれど、そのかわりに仕事を手伝ってくれませんかな?もうそろそろ収穫の季節だ。人手がいりますからね」
「分かりました。僕のことはツキト、と呼んで下さい。暫くの間、お世話になります」
――笑顔がありました。その時からでしょう。わたしが"あの人"に恋してしまったのは……
続く
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